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星空に視線を奪われたくなくて、カーテンはぴったりと閉めている。橙色の部屋の明かり。
…王子様の瞳に映るのはぼくひとりだけ。
ぼくのベッド、ふかふかの布団の中。端に追いやられた、脱ぎ捨てられた2着のパジャマ。
ふたりの指をからませれば、凍える余裕もなくなって、すぐに寒さなんて忘れてしまった。夜だけの熱い息遣いが気になったりして、顔や背中にはじわりと汗が滲んでいる。
「ッ、ほたるさん、可愛い…。」
「るきそ、さ…、ぁ、んっ、ん…」
2人分の体の重さにベッドもギシギシと声をあげていた。どちらのものかもわからない涎と、垂れ流れた涙にまみれた口元にまたキスをされ、息もたえだえになりながら舌を絡めた。
何度目かもわからない、体を駆け巡るその感覚。王子様の背中に手をまわせば、しっとりとした生あたたかさに右も左もわからなくなる。
「ほたるさん、もうこんなになって。…そう、ゆっくり呼吸をしてごらん。」
何とか呼吸を整えて、王子様を…ルキソスさんを見上げる。ルキソスさんが頬に張り付いた紫色の長い髪を耳にかけると、汗が1粒ぼくのほっぺにぽたりと落ちた。悪戯な笑みを浮かべながら、ルキソスさんはぼくに聞く。
「気持ちよかったかい?」
「はぁ…はぁ、ん、ルキソ、さんのいじわ、る。ぁ、もう、そんなこと………気持ちよかったよ。」
「ふふ、知ってる。やっぱり素直なところが可愛らしいね。ごめんよ、ボクだけに見せてくれる声や仕草をもっと知りたくて、つい意地悪したくなってしまうんだ…。」
「からかわ、ないでよ。いつもぼくばっかりこんなに乱れて…恥ずかしいしなんだかかっこ悪いよ。ぼくの気持ちいいところばっかりして、はぁはぁ…。」
「気にしないで、でもね、ほたるさんが魅力的なのがいけないんだよ、…なんてね。ああもう、魅力的すぎるよ。だってボクの愛を受け入れて、かけがえのない愛をくれるたった1人のパートナーなんだからさ。正直…あまりにも可愛らしいからもっとぐちゃぐちゃに求められたいくらいさ。」
「も、もっと?もう虜になってるよ…?今日も、ぼくから誘っちゃったし…。」
「でも、恥ずかしがって遠慮してるでしょ。どんなほたるさんも素敵なんだから、ボクのためだと思ってさ、さらけ出しちゃいなよ。」
「えへへ…ルキソスさんはぼくのこと、いっぱい知ってるなぁ。流石ぼくの王子様だよ。」
「ふふ、ほたるさんもボクと同じだからね。白い雪が似合う、可憐でかっこいい王子様さ。おや、自分で言ってしまった。でも、間違っちゃいないでしょ?」
「は、恥ずかしくてわけがわからなくなっちゃう…。」
布団に包まれ、体を寄せ合い密着する。首元にキスをされる。愛を編み、つめたい雪を溶かす夜。
…優しい、でもまだまだ足りないよ。
ルキソスさんのためなんだからね、なんて思いながら。ドキドキ早る心臓の音を感じながら。
ぼくはルキソスさんの耳元に顔を寄せて、そっと囁いた。
「…もっかいしよ?」
きみが教えてくれる知らない世界。
でもぼくは、抱きしめられたりキスをされちゃうだけでも、雲の上にいるみたいに気持ちいいから…。
愛されて愛されて、いっぱいいっぱいになっちゃって、ぼくはまたきみに夢中になって、きみの色に染まっちゃうんだ。