からすを守る。当たり前だろ…!!!からすは兵器じゃねぇんだ。ふざけるな。
俺はからすがいないとダメなんだよ。
守り人?知るか。俺はからすだけは、この恋心だけは誰にも、何にも譲れないんだよ。
オキと戦って滅茶苦茶にされて、一番に思いついたのはからすだった。からすに心配かけちまうって。
からす。本当に愛してるんだよ。
…わかってる、俺もそこまで馬鹿じゃねぇ。からすを選んじまったら俺もからすもこの星も、過去も、未来も、全部消えちまうって。
それでも俺はからすより大事なものを作りたくねぇんだよ。俺が貫くのはからすを愛して守ること…。この星とからすを天秤にかけてとっくにからすを選んじまってたんだ。
狂ってる、最低な裏切り者だろ?
それでも、もう、この心だけは仕方ねぇんだよ。
心を決めちまうと少し軽くなった。緊張がわずかにほぐれて、胸の傷の痛みを思い出すくらいには。
俺はからすに想いを伝える。
「からす。俺はからすのこと選びたい…。俺は、いつだって、絶対に、からすの恋人なんだ。からすが好きなんだ。許してくれるか?」
「…さくら君。
もちろんだ。ありがとう。いいんだぞ、わたしもさくら君のことが一番だから。さくら君、愛しているぞ。」
「へへ、俺も。愛してる、ずっと。」
「辛くないか。さくら君のことこんな気持ちにさせてしまって…やっぱり、わたしは侵略者だったのだな。さくら君、罪の意識はわたしが受け止めてあげるからな。辛いこと全部わたしのせいにしてもいいからな。本当にありがとう。本当はわたしを選んでくれて、すごく、すごくうれしいんだ。だから、好きにしていいんだぞ。好きなことを話しても、いいんだぞ。」
「からすは優しいな。ありがとう。」
恋に溺れて、唇を重ねた。窓の外の張りぼての月が俺達を笑っていたとしてもいい。ここは俺達だけの世界。
俺達だけの星なんだ。
「そうだ、殴ってごめん…。」
「気にする必要はないぞ。さくら君の方が痛い思いしているだろう。」
この時間がずっと続けばいいのにな、昨日に戻れたらいいのにな。
そんな言葉は飲み込んだ。
そのかわりに数年前のからすの言葉…『大切なものに時間の長さなんて関係ない。お互い未来を怖がる必要なんてないんだ。』という言葉を何度も心に言い聞かせた。
俺がからすのもとへ来てから、もうそろそろ、30分が過ぎようとしている。俺は目を閉じてからすの胸に顔をうずめていた。
ふとからすが言う。
「さくら君…侵略者がここへきたらどうする。」
「ここへ来る!?どうやって…。」
「落ち着くんださくら君。私も今気が付いた。」
からすは俺の血だまりを指さした。
ぽたぽた…それはこの世界の入り口へと続いている。そうだ、俺は地獄の底から飛んできたときにもべとべとと血を残してきてしまっている…。ささめきの嘘に気が付いたオキはそれをたどってここへやってこられるかもしれない。いくら入り口を守り人の力でふさいでも、地獄の壁も、その力も、空間も、全てを破壊されてしまえば…意味がない。
ここにオキがやってきたら…?俺は震えた。唇をかみしめる。
からすが目のまえで殺される、そんな光景、耐えられない…。ありえない。
からすが奪われる。目の前で。俺のからすが。大切なからすが。奪われる。
からすを守らなきゃ…でも怪我を負った俺じゃまともに戦えない、きっと勝てない…。バラバラにされた俺。息絶えたからすの体から爆弾を取り出される、そんな光景、許せるわけないだろ。
「からすがあんな奴に奪われるのは…いやだ。」
素直に口に出す。
口にだしてもちっとも楽にならない。
俺は俺の心に聞く。俺の心の奥に聞く。
俺が守りたいのは何だって。
じゃあ、俺はどうしたいんだって。
俺は…!!